日本の医療論文における「マインドフルネス」と関連する概念の分析 その1

Submitted 19 Apr 2021, Revised version accepted, 5 May 2021

 マインドフルネスは,学部向けの臨床心理学概論で第5の心理療法として取り上げられるほど,急速に浸透している.医療において,どのように使用されているのか,テキスト分析により調べた.CiNiiで“マインドフルネス”で検索した医療関係834論文のタイトルについて分析を行なった.まず,単語の出現頻度を計算して頻出単語を検討した.心理療法,認知行動療法との強い関連がしめされ,医療現場,臨床現場での実用が示された.次に単語の共起性に基づく分析を行なった.出現回数10回以上の215単語の共起行列から,MDSにより単語の近接性の2次元マップを作成,同じ行列に階層的クラスター分析をおこなって単語を分類した.
 大まかな傾向を掴むために,クラスター毎に代表的な単語を選んだ.[ ]は,同一のクラスターに分類されていることを示す.[森田療法,禅],[怒り感情のコントロールDetached Mindfulness(と関連する)受容,怒り],[マインドフルネストレーニング(と関連する)呼吸,注意,訓練,機能],[認知行動療法,(その英語での)CBT, 不安,低減,介入], [発達,受容],[助産,育児],[看護,保健,産業衛生,Self-Compassion,幸福,ファシリテーション].共通性が高いのが[地域,リハビリテーション,コミットメント,慢性,疼痛,障害,症状,身体,尺度],[仏教,精神療法,ストレス,教育,実践],ほとんど全てに共通する要素であるのが[マインドフルネス,宗教,祈り],[認知,研究]である.
 以上の分類結果から,既に確立している森田療法や認知行動療法との組み合わせ,ネガティブ感情のコントロール,(患者だけでなく,医療従事者の)ストレスコントロール,慢性疼痛などの難治性の症状への応用,トレーニング手法が,応用と研究の大きな方向性であることが浮かび上がった.森田療法↔︎認知行動療法,怒り感情のコントロール(Detached Mindfulness)↔︎幸福,自身への慈しみ(Self-Compassion)のような対極的関係も見出すことができた.