ヘルムホルツ型不協和の動力学的解消について

Submitted 1 July 2023

1863 年、ヘルマン・フォン・ヘルムホルツ Hermann von Helmholtz は彼の主著『DIE LEHRE VON DEN TONEMPFINDUNGEN ALS PHYSIOLOGISCHE GRUNDLAGE FUER DIE THEORIE DER MUSIK(音楽理論の生理学的基礎づけとしての楽音知覚教程)』 において「和音」の協和性を近接する純音間の「うなり(beats, die Schwebungen)」から 解釈する説明を試みた。今日の観点からは誤った推論であるが、彼の先駆的な試みは原著 以降 160 年間追試されず、凌駕する者も現れなかった。本論文ではギェルギ・フォン・ベ ケシー György von Békésy によって 1962 年に報告された「エッジ聴」の現象をもとに、ヘ ルムホルツ型の「うなり」で基礎づけられた「不協和」の現象は、和声構成音のスペクト ル線幅を変化させることで制御可能で、不協和感を消失させることすら出来ることを簡潔 に示す。